ISOとは?
1.ISOの現状と歴史
1.1 ISOとは?
規格や標準類は、関係する組織体のレベルにより種々制定されており、それらは、企業レベルで利用される“社内規格”、業界レベルで利用される“団体・工業会規格”、国レベルでの利用を前提に制定される“国家規格”(JIS等)、ヨーロッパなど一定の地域レベルで制定される“地域規格”(CEN等)、国際的な利用を期待して制定される“国際規格”などに分類されている。この中で最高レベルに位置付けられる国際規格を制定する代表的な国際機関の一つがISOである。
ISOは、“物質及びサービスの国際交換を容易にし、知的、科学的、技術的及び経済的活動分野の協力を助長させるために世界的な標準化及びその関連活動の発展開発を図ること”を目的に、1947年2月23日に発足した。ISOは非政府組織ではあるが、国際連合とその関連機関及び国連専門機関における諮問的地位を有しており、通常の民間組織とは異なっている。本部はスイスのジュネーブにある(ISOはスイス民法による法人組織)。
ISOは、電気分野(IECが担当)を除くあらゆる分野の標準化を推進する非政府間国際機関であり、その参加は各国の代表的標準化機関1つに限られている。2024年7月現在の会員は、171ヶ国から171機関を数えており、日本からはJISの調査・審議を行っているJISC(日本産業標準調査会)が1952年から加盟している。
1.2 なぜISOが注目される?
近年、建築物・住宅の性能や省エネルギー等についてISOで審議が進められているが、我が国はこの分野において世界に先行する立場にあり、制定されるISO規格と我が国の基準との整合を図るため、ISO規格制定への積極的な参加が求められている。
1.3 日本のISOへの参加
1.4 ISOとJISとの整合化の実現
- JISのカバーしていない農業分野があること。
- 製品規格が少ないこと。
- 過去にヨーロッパを中心に開発されたこと。
しかし、JISCではISO、IECの国際規格にJISを整合させて開発するため、ISO、IEC規格開発のための審議を行う委員会とJISを審議する委員会を出来る限り一致させ、国際規格の動向をJISに反映させるように努力している。
また、ISO9000シリーズ(品質保証)のように、そのまま翻訳してJISのZ9900シリーズとして、JISに取り込んでいる例もある。
2.ISOの組織と機能
2.1 専門委員会
ISOの専門業務はTCによって行われる。TCを設置するための決定はTMB(Technical Management Board:技術管理評議会)が行い、その活動範囲も承認する。 各TCは、その業務の種々を扱う分科委員会(Sub Committee : SC)及び、作業グループ(Working Group : WG)を設置できる。
各TC及びSCには、ISO会員団体に割り当てられた‘幹事国(secretariat)’が設けられており、TCの場合にはTMBによって、またSCの場合にはその親委員会によって割り当てられる。各WGでは、Convenorを親委員会が指名する。
2024年1月現在、268のTC、498のSC、2,506のWGがある。また、作成されたISO規格は2023年12月末現在、25,111規格を数えている。(”ISO in figures 2023”より)
なお、TCには内容に興味のある国が参加しており、例えばすべてのTCに日本が参加している訳ではない。(多くに参加はしているが)
2.2 日本でのTCの対応
参考として、日本で動いている建築・土木関連のTCを下記する。網掛けのTCは、当機構の担当しているTCである。
T C | 名 称 |
TC 10 | 製品技術文書情報/建設関連文書(SC8) |
TC 17 | 鋼 |
TC 21 | 消防器具/煙制御システム(SC11) |
TC 59 | 構築物 |
TC 71 | コンクリート、鉄筋コンクリート及びプレストレストコンクリート |
TC 89 | 木質系パネル |
TC 92 | 火災安全 |
TC 98 | 構造物の設計の基本 |
TC 135 | 非破壊試験 |
TC 160 | 建築用ガラス |
TC 162 | ドア、窓及びカーテンウォール |
TC 163 | 建築環境における熱的性能とエネルギー使用 |
TC 165 |
木質構造
|
TC 167 | 鋼構造及びアルミニウム構造 |
TC 182 | 地盤工学 |
TC 205 | 建築環境設計 |
TC 219 | 床敷物 |
TC 268 | 持続可能な都市とコミュニティ |
2.3 ISO規格制定までのプロセス
プロジェクトの段階・順序及び関連文書を列記する。
プロジェクトの段階 | 関連文書 | |
名称 | 略号 | |
0.予備段階 | 予備業務項目 (Preliminary work item) | PWI |
1.提案段階 | 新業務項目提案 (New work item proposal) | NP |
2.作成段階 | 作業原案 (Working draft) | WD |
3.委員会段階 | 委員会原案 (Committee draft) | CD |
4.照会段階 | 国際規格案 (Draft International Standard) | DIS |
5.承認段階 | 最終国際規格案 (Final Draft International Standard) | FDIS |
6.発行段階 | 国際規格 (International Standard) | IS |
1-3の段階は各TC/SC内で回付・投票されるが、4(DIS)と5(FDIS)の段階では、全会員団体(国)に回付される。この後に、国際規格(IS)になる訳である。
この中で重要なものは委員会原案(CD)であり、専門家の集団であるTC/SCの中でCDは十分に練り上げられ、又、各国の意見を尊重しなければならない。
DISとFDISについては、投票Pメンバーの2/3以上の賛成かつ、反対が総投票数の1/4以下の場合に成立する。通常、基本的な技術問題はTC/SCレベルで解決されるが、会員団体が投票することにより、重要な異議が見逃されていないことが確認される。
3.ISOコンタクトポイント
Chemin de Blandonnet 8, CP 401, 1214 Vernier, Geneva, Switzerland
E-mail: central@iso.org
Tel. : +41 22 749 01 11
なお、ISOではInternet上にホームページを開設している。各TCのサマリーや幹事国、各国の代表組織、おびただしい数の国際会議日程がUpされている。(英語とフランス語とロシア語が可)